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第2号(2006/03/10発行)
【日本人旅行者リピーター化】
1.顧客満足の要因について考えよう。
創刊号である前号で、ホテル・旅館の特性には先天的特性と後天的特性があることと、本メールマガジンでは多額の投資を要する先天的特性ではなく工夫次第で改善できる後天的特性を主に取り上げることをお伝えしました。今号では、その具体策について掘り下げてみます。
従業員満足を決定付ける要因に『衛生要因(不満足要因)』と『促進要因(動機付け要因)』とがあります。衛生要因とは、改善されれば不満足をなくす、あるいは減少させることはできるが、従業員のやる気を増大させたり、動機付けたりすることのない要因のことで、会社の経営方針、対人関係、労働環境、給与などが該当します。給与が衛生要因に含まれることを意外に思う方もいらっしゃるかもしれません。勿論、給与が少ないことは不満足につながります。そして、昇給してしばらくの間はやる気が出るかもしれませんが、慣れてしまうと元に戻ります。給与水準が高いことだけでは継続的に従業員を動機付けられないため、給与は衛生要因に含まれます。
一方、促進要因とは、従業員のやる気を増大させたり、動機付けたりする要因のことで、評価、仕事のやり甲斐、責任と権限の付与、成長の可能性などが該当します。これらは、なくても不満足にはつながりませんが、あると従業員は積極的かつ自主的に一生懸命仕事をするようになり、仕事に対する充実度・満足度も高くなります。
顧客満足の要因にも同じことが言えます。顧客満足における衛生要因は、文字通り衛生や環境になります。例えばレストランに行ってトイレが汚かったら、その不快感(不満足)だけで二度とそのレストランに行かなくなることはありますが、逆にトイレがすごくきれいなレストランにトイレがきれいという理由だけでリピーターとなって何度も行くことはないと思います。ホテル・旅館も同じです。お客様は、不潔なホテル・旅館には二度と来てくれませんが、清掃が隅々まで行き届いていて文句の付けようもないくらいに清潔であっても、それだけではリピーターとなって何度も来てくれることはないでしょう。衛生や環境などの衛生要因は、お客様が一定の水準を満たしていて当然と考えている要因なので、期待水準を下回っていると不満足につながりますが、期待水準を大きく上回ったからと言って顧客満足向上にはつながりません。
それでは、顧客満足における促進要因は何でしょうか。それは、眺望、温泉、食事、もてなし等です。『眺めが良かったから空気が澄んでいる冬にもう一度来よう』、『あの温泉に入ったら肌がつるつるになったので別の友人とまた来たい』、『新鮮な魚介類を使った料理が美味しかったので今度は家族にも食べさせたい』、『女将や仲居さんの愛想が良く、機転も利いて居心地が良かったので、この町に来るときには次もここに泊まろう』など、これらの要素はお客様の満足度を高め、リピートや口コミにつながります。
衛生要因と促進要因という言葉は知らなくても、促進要因を意識しておられるホテル・旅館はあると思います。そのようなホテル・旅館では、『うちの売りは○○だ』と言うときの売りとして、先述の眺望、温泉、料理、もてなし等が入っているはずです。もし、清潔感や静かな環境を売りにしておられたら、それらは大事にしつつ、他の売りを見出すか、作り出す努力をして頂くとより効果的だと思います。
価格は衛生要因でしょうか、促進要因でしょうか。給料と料金は同じお金とはいえ性質が異なりますので、従業員満足において給料が衛生要因であったからと言って価格も衛生要因となるわけではありません。価格は、衛生要因にも促進要因にもなり得ます。満足要因となるのは価格の絶対額ではなく、割高が衛生要因となり、割安は促進要因となります。買い物に置き換えてみると分かり易いと思います。割高な商品は二度と買いませんが、割安な商品は継続的に買いますし、人にも教えます。割高か割安かの判断は、価格と提供した価値のバランスで決まります。提供した価値に比べて価格が高
ければ割高、逆に低ければ割安となります。割高を適正な水準にし、さらには割安と感
じてもらえるようにするには提供する価値を上げるか価格を下げるかしかありません。
価格を下げるのは価格表を書き換えるだけなので簡単なことですが、痛みを伴いますし、最もしたくないことです。できることなら提供する価値を上げたいところです。衛生要因を期待水準にまで高めて不満足を取り除くことも価値向上につながりますし、促進要因を高めることももちろん価値向上に直結します。
ここまでいろいろ考え方を書いてきましたが、何をすべきかをまとめてみます。
(1) 自社の衛生要因・促進要因の洗い出し
主な衛生要因と促進要因は既に書きましたが、他にも各ホテル・旅館の置かれている状況によっては満足度に影響を及ぼす衛生要因、促進要因があるかもしれません。これまで説明してきたような視点で見直して、自社なりの衛生要因、促進要因を洗い出してみてください。
(2)自社の活動と各要因との紐付け
日々の活動は、一つまたは複数の要因に影響を及ぼしているはずです。日々の様々な活動がどの要因に影響を及ぼしているのか紐付けしてみて下さい。
(3) 必要以上に衛生要因に割り当てている経営資源を削減する
決して清掃や環境に関する活動をないがしろにすることをお奨めするわけではありませんが、衛生要因において一定水準を超えて過剰品質になることは顧客満足向上にはつながりません。経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報、時間など)が限られている以上、それを有効活用するために活動を取捨選択して適性に配分することは不可欠です。例えば清掃に必要以上に時間をかけていること等が考えられます。程度が難しいのですが、自己満足で潔癖症なまでに掃除をしている場合、その工数を他の活動に振り向けた方が顧客満足向上の視点からは有効です。清掃は、お客様の『期待水準+α』でよしとする割り切りも必要です。但し、注意して頂きたいのは、この考え方が掃除嫌いの言い訳に使われてしまうことがあることです。また、風呂が売りの旅館が風呂掃除を念入りにすること、庭園が売りのホテルが庭掃除を徹底的にすることや、眺望が売りのホテルが窓掃除を丹念にするのは通常の清掃活動の範囲ではありませんのでご注意下さい。
(4) 促進要因に割り当てる経営資源を増大させる
衛生要因に費やしていた時間を削減して浮いた時間を、促進要因を高める活動に振向けて下さい。衛生要因は期待水準を満たしていればそれ以上は過剰品質になるという性質がありますが、促進要因にはやり過ぎも上限もありません。いわば青天井です。時間の許す限り、自社の促進要因を高める活動に従事して下さい。
【外国人旅行者の受入体制】
2.館内文書を英語化しよう。
創刊号である前号で、先ずは館内文書などを外国語化し、口頭での対応は必要最小限にできる状態を作り上げ、そしてスタッフが口頭での英語対応力を伸ばしていくという手順で外国人旅行者の受入態勢を構築するという考え方をご紹介しました。今号から、館内文書などの英語化について、順を追ってご紹介します。
館内文書と言っても、宿泊カード、約款、館内案内、メニュー、請求書、領収書、館内標識など様々です。この中で宿泊カード(Registration Form)は比較的簡単に英語化できますし、また英語化することが最も必要な文書であると言えます。以下に、宿泊カードの英訳に必要だと考えられる主な単語をご紹介します。
Name -(氏名), Last (Family) Name -(姓), First (Given) Name -(名)
Date of Birth -(生年月日), Age -(年齢)
Sex -(性別), Male -(男性), Female -(女性)
Passport No. -(パスポート番号)
Address(住所), Country(国), State -(州), Telephone No. -(電話番号)
Nationality -(国籍), Occupation -(職業)
Port of Entry in Japan -(入国地), Date of Entry in Japan -(入国日)
Check-in Date -(到着日), Check-out Date -(出発日)
Number of Nights -(宿泊日数), Number of People -(人数)
Room No. -(部屋番号), Room rate -(料金)
Signature -(署名), Remarks -(備考), Please Print. -(活字体でご記入下さい。)
最後の “Please Print” は『活字体でご記入下さい』という意味ですが、筆記体で崩して書かれるとせっかく書いてもらっても読めないので、この文章を宿泊カードの見易い位置に書いておいた方が確実です。
また、宿泊カードは日本語版と英語版を別々に作るのではなく、日本語と英語の併記にした方がより便利です。なぜならば、書類の種類が増えない、英語の全くできないスタッフでもどの欄に何が書いてあるか分かる、中国人、台湾人や一部の韓国人は英語と漢字の両方で判断できる等のメリットがあるからです。
では、宿泊カードを書いて頂くときに何と言えばいいのでしょうか。黙ってペンと宿泊カードを渡せば書いてくれます。このように言葉なしで動作だけで意思疎通できるのが、電話やメールと違って対面コミュニケーションの便利なところですが、せっかくなので覚えておきましょう。
Could you please fill out this registration form? Please print clearly.
(宿泊カードをご記入いただけませんでしょうか。はっきりと活字体でご記入願います。)
宿泊カードにも”Please print.”と書いてありますが、口頭でも念押しした方が確実です。宿泊カードの記入内容はほぼ万国共通ですので、質問されることはないと思います。これで、宿泊カードは記入してもらえました。
宿泊カードを記入してもらうということは既に予約がされているということですが、予約はどうしたのでしょうか。旅行代理店経由であれば問題ありませんが、直接海外から予約を受け付けるとなると自信がないという方が大半ではないでしょうか。しかし、旅行代理店の紹介を待っているだけよりも、自社でも直接海外からの予約を受け付けられるようにできれば間口は大きく広がります。
直接海外から予約を入れてもらえるようにするためには、自社の存在を知ってもらう必要があります。そのためには、外国語のホームページや外国語のガイドブック掲載が重要になります。外国語のホームページがない状態で外国語のガイドブックに掲載されると予約や問合せは電話で入ってきます。電話での予約受付は本当に難しいです。『生兵法は怪我の元』と言うように聞き間違いが発生したら大変です。ゆえに、外国語のホームページを持つことが重要になってきます。外国語のホームページを作成してそれを旅行関係のポータルサイト等にリンクさせたり、ガイドブックにもホームページのアドレスを記入したりしておけば、相対的に簡単なメールでの予約受付に誘導することができます。
次号では、外国語(先ずは英語)のホームページ作成時の注意点と、海外からの予約受付についてご紹介します。
【編集後記】
2005年の訪日外国人旅行者数は673万人(推計値)と発表され、2004年の614万人から59万人増加し、対前年比9.7%増となりました。愛知万博効果とビジット・ジャパン・キャンペーンの成果がこの数字に現れているとのことです。2008年の目標が900万人、2010年が1,000万人ですので、ビジット・ジャパン・キャンペーン活動が今後ますます活発になることに期待したいと思います。
今号の前半の話題は、ホテル旅館に限った話ではなく、広く様々な業界に応用できる話題だったと思います。是非ホテル・旅館業界の方は勿論、他業界の方にも本メールマガジンをご紹介下さい。
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